身を引くはずが、敏腕ドクターはママと双子に溢れる愛を注ぎ込む
今まで会えなかった理由を話し、これからは一緒にいられるということを説明してわかる年齢ならきっとそれを話していた。
しかし、まだ小難しい話がわかる年齢ではない。
「でも、詩はあんな風に漣さんに飛び込んでいけてましたし、月だって、時間はかかっても大丈夫だと思います」
パパという存在が三歳になる今までなかったのだ。戸惑うのが普通だし、自然なこと。
だけど、これから時間をかけて関係を築いていけばいい。
やっと、四人家族としてのスタートラインに立ったばかりなのだから。
ワインのまだ残るグラスをテーブルに置いた漣さんが、私の手からもそっとグラスを抜き取る。
両手が空くと横から腕が回された。引き寄せて抱きしめられる。
「ありがとう。あの子たちに認めてもらえるように、努力していく。三年……いや、菜々恵が妊娠してからそばにいられなかった分、ちゃんと取り戻せるように」
漣さんの言葉を耳に「はい」と返事をしながら、目前にある彼の首元に顔を埋める。
密着して伝わるぬくもりに、漣さんが本当に現れ、こうしてまた一緒の時間を過ごせていることを改めて実感する。
子どもたちと一緒の時間はふたりを中心に行動も感情も動いているから、子どもたちが眠りに着いた今になってやっと、自分だけの感情が働き始める。