身を引くはずが、敏腕ドクターはママと双子に溢れる愛を注ぎ込む


「なんか、やっぱり夢みたいで……。漣さんが、こうしてそばにいることが、長い夢を見てるだけだったらどうしようって」

「菜々恵」


 名前を呼ばれて顔を上げると、ふわりと唇が重なる。少し離れた漣さんの唇から「夢じゃない」と囁かれ、そっと目を閉じた。

 触れては離れる優しい口づけと、髪の毛をかき混ぜるように頭皮に触れる指先。

 鼓動の高鳴りと共に体の熱が上がっていく。


「俺だって、君にまたこうして触れられる日がくるなんて、思いもしなかった」

「漣さん……」

「もう離さないし、これまで君への想いを募らせてきた分、存分に愛するから覚悟して」


 そんなことを囁かれたら、体の熱は上がる一方で、目を閉じて口づけを待ち侘びる。

 すぐに再び唇が触れ、深く重なり合った。

 舌先が閉じた唇をなぞり、導かれるようにわずかに口を開く。

 口内に生温かい舌が侵入すると体の芯が思い出したようにキュンとなった。

 求めるように情熱的でも、優しい慈しむようなキス。

 初めて体を重ねたとき、この口づけが私の不安と緊張を溶かしてくれた。

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