身を引くはずが、敏腕ドクターはママと双子に溢れる愛を注ぎ込む


「わー、すごいすごーい!」

「うた、かんらんしゃある!」

「ほんとうだ! ママー、パパー、きてー」


 ホテルを出た漣さんが車を走らせ到着した先は、都心の真ん中にあるテーマパーク。

 東京に住んでいた頃、電車からは何度も見たことはあったけれど、私も訪れるのは初めてだ。


「パパ、うた、かんらんしゃにのりたい」


 詩は今朝起きてきてすぐから「パパ、おはよう」と漣さんの元に行っていた。

 一方、昨日寝落ちしてしまった月は、やっぱり漣さんには朝の「おはよう」の挨拶はしたものの、〝パパ〟と呼ぶことはしなかった。

 私の聞いているかぎりでは、未だパパと呼ぶことはしていない。

 話しかけられれば普通に話しているけれど、パパと呼んで甘えることはまだハードルが高いようだ。


「よし、じゃあ詩の乗りたい観覧車から行くか」

「わーい!」


 詩は漣さんの手を握り、「パパ、だっこして」とすっかり懐いている。

 漣さんは顔を綻ばせて詩を軽々持ち上げた。

 私はいつも両手で抱っこしているけれど、漣さんはなんてことなく片手で詩を抱いている。


「月も来るか?」


 私の横にいる月が漣さんに抱っこされる詩を見ていて、その視線に気づいた漣さんが月を自分の抱っこに誘う。

 でも、月は無言で横に小さく首を振った。


「ママ、だっこ」


 その代わりに抱っこを求められ、月を両手で抱き上げた。

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