身を引くはずが、敏腕ドクターはママと双子に溢れる愛を注ぎ込む
もっと、ひとりでどこか勝手に行かないように話しておけばよかった。
絶対に離れることが有り得ないと思っていたから、そんな話しようとも頭に浮かばなかった。
東京のこんな人の多い場所で、迷子になんかなったら捜しにくい。
それに、周囲にどんな人間がいるかわからない。最近は男の子だって誘拐される事件はあるし、大人に捕まれば抵抗もできずあっと言う間に連れ去られてしまう。
こういう子どもの集まる場所は、よからぬ企みで子どもたちを狙っている人間もいないとは限らない。
親とはぐれた子を見つけて、声をかけて……。
「月ー!? 月―!」
最悪の展開ばかりが頭をよぎり、血の気が引いていくのを感じる。動悸がして、心拍が上がる。
「ママ、いたい」
「あっ、ごめん……」
焦りからか、繋いでいる詩の手を強く握り過ぎていた。詩からの声でハッと我に返る。
「月……どこにいるの」
漣さんが言っていたように、月の足ではそこまで遠くに行けるとも思えない。
だけど、さっき写真を撮っていた場所から範囲を広げて捜しても見つからず、どうしたらいいのかわからず足が止まる。
スマートフォンを手に取り漣さんに連絡を入れようと思ったとき、タイミングよく漣さんから着信が入った。