身を引くはずが、敏腕ドクターはママと双子に溢れる愛を注ぎ込む
「漣さん、見つかりましたか!?」
『いや、まだ見つからない』
もしかしたら、月が見つかったという連絡かもしれないと思って電話に出た。
しかし、漣さんのほうも月は見つかったいないという知らせ。
『そっちは』
「いません。どうしよう……迷子センターとかに行って、放送を流してもらうとか」
『菜々恵、今さっきいた場所からは離れているか?』
「はい。奥のほうまで捜して歩いてきていて」
『もしかしたら、月のほうも捜してさっきの場所に戻ってきているかもしれない』
「あっ……」
そこまで考えず、とにかく見つけないとと闇雲に歩いてきてしまった。
行き違いになっていたら──新たにその不安に襲われ踵を返す。
「一旦戻ります。捜しながら」
『ああ。俺も捜しながらさっきいた場所の周辺をもう一度見て回る。それでも見つからなければ迷子センターに行こう』
「わかりました」
まさかこんなことになるなんて。私が手を離さなければ。待たせないで写真に一緒に入れていれば。
もう頭では後悔とたらればの考えしか生まれず、周囲に目を凝らしながらさっきいた場所へと急いで足を進める。
時折「ママ、はやい!」と詩から苦情が入るものの「ごめん」と言いながらスピードを緩めることはできなかった。