身を引くはずが、敏腕ドクターはママと双子に溢れる愛を注ぎ込む


「パパ!」

 愛しくて大事で、大好きな声が耳に飛び込み足が止まる。

 我が子の声を聞き間違うはずはない。

 周囲の喧騒の中ではっきりと聞こえたのは、間違いなく月の声。


「月っ?」


 声のほうへ振り返ると、「月!」と叫んだ漣さんが駆けていく姿が目に入った。

 その先には、一生懸命に走って漣さんの元に向かう月の姿が。


「パパー!」


 はっきりとした声でそう叫び、漣さんが広げた腕の中に飛び込んだ。


 良かった……月、良かった……。


 やっと見つかった月の姿に安堵が押し寄せ、その場で腰が抜け座り込んでしまう。

 漣さんにしっかり抱き留められた月の姿を目に、ぶわっと涙が込み上げた。


「ママ! だいじょうぶ?」


 一緒にいた詩が私の腕を掴み、立ち上がらせようと引っ張ってくれる。


「ママー!」


 向こうから漣さんとともに月が走ってきて、今度は座り込んだままの私に抱きついた。


「月、良かったよ、月」


 言葉もまともに出ず、ただしっかり月を抱きしめる。

 無事に戻ってきてくれたことに何より感謝し、存在を確かめるように頭や背中を撫でる。

 耳元で聞こえる月の「ママ」と呼ぶ声にまた涙が溢れ出ていた。

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