身を引くはずが、敏腕ドクターはママと双子に溢れる愛を注ぎ込む
妊娠してしまった不安を抱えて帰ってきた故郷は、あのときの私を救ってくれた唯一の場所だった。
それから、自分が生まれ育った場所でふたりを産み、三年間育ててきた大切な場所。
子どもたちは気軽に『ばーば、またくるねー!』なんて言って行ってしまったけれど、私は温かく迎え入れ、そしていつもそばで見守ってくれたおばあちゃんと離れがたい気持ちがないと言ったら嘘になる。
「菜々恵、なんて顔してるの」
思わず表情を歪めてしまった私を見逃さないおばあちゃんは、弱ったように微笑む。
その皺の寄った優しい笑顔が大好きだ。
「一生の別れじゃないだろう。ばーちゃんはいつだってここにいる。だから、いつでも遊びにおいで」
うんうんと何度も頷く。
ちょうどこそに漣さんが荷物を取りに来てくれて、おばあちゃんに深く頭を下げた。
「菜々恵さんと、月と詩を、これまで見守っていただきありがとうございました」
漣さんの挨拶に思わず涙腺が緩む。
おばあちゃんは微笑を浮かべ、漣さんに丁寧に頭を下げた。
「菜々恵と、月と詩をよろしくお願いします。どうか、幸せにしてやってください」
浮かんだ涙が、おばあちゃんの言葉を耳に頬を流れ落ちていく。
漣さんが「はい。必ず、お約束します」と返事をしたのを耳にしながら、濡れた頬を指で拭った。