身を引くはずが、敏腕ドクターはママと双子に溢れる愛を注ぎ込む
都会の一等地に、緑豊かな目を引く一角。
黒とグレー配色の外壁が近代的な印象を与える地上三階建てのマンションが、漣さんが用意してくれた私たちの新居だ。
車のまま敷地内地下へと入っていくと、そこは居住者専用の駐車場が用意されている。
車を降り地下から一階エントランスにエレベーターで上がると、そこはホテルのラウンジかと思えるようなガラス張りで開放感のあるエントランスホールが広がった。
「ママー、すごーい! いけがある! うた、いこう」
ホール中央には立派な噴水があり、それを見つけた月は詩を連れて見にいってしまう。
静かなラウンジで子どもの声が騒々しく響き渡り、私は慌ててあとを追いかけた。
噴水の前できゃっきゃと騒ぐ子どもたちの頭にそれぞれ手を載せる。
「月、詩。ここは公園ではないから、お話のボリュームをもう少し下げようか」
今はタイミング良く他の居住者の姿がないからいいけれど、他に人がいれば騒がしくて迷惑になってしまう。
ふたりは聞き分けよく「はーい」と言って向こうで待つ漣さんの元へと走っていった。
エレベーターで三階まで上がり、一番奥手にある玄関前で漣さんは足を止める。
ドアを開けると子どもたちが「ただいまー!」と勢いよく中に走っていった。