身を引くはずが、敏腕ドクターはママと双子に溢れる愛を注ぎ込む


「菜々恵、おいで」


 子どもたちが自分たちの部屋に夢中になっているところ、漣さんに呼ばれる。

 リビングの奥、バルコニーの手前にも扉があり、漣さんはその部屋のドアを開いて入っていく。

 あとに続いて部屋に入ると、そこは夫婦の寝室になっていた。

 グレーシルバーのシーツがかかる広いベッドは、落ち着いた大人の寝室にぴったりだ。


「子ども部屋のとなりが、ふたりの寝室になったから」

「そうなんですね。素敵な寝室にしてもらっって」


 すると突然、ふわりと背後から抱きすくめられる。

 耳元に近づいた漣さんが微かにクスっと笑った気配を感じた。


「子ども部屋のとなりじゃ、可愛い声は控え目にしないといけないかもな」


 一瞬なんのことを言われたかわからなかったものの、とんでもなく意地悪なことを囁かれたと気づいて顔がぼっと熱くなる。


「っ、漣さん!」


 つい怒ったような声を出すと、漣さんはまたクスッと笑って私を解放した。

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