身を引くはずが、敏腕ドクターはママと双子に溢れる愛を注ぎ込む


「すみません。箱の外側に何が入っているか書いておけば良かったんですけど」

「急だったし、業者に頼んだわけじゃないからな。宅急便手配だったから、箱には書けないのは仕方ないだろ。でも、品名に衣類とか、ざっくりとは書いてあるから大丈夫」


 手分けして箱を開けていく。

 子どもたちの冬服をふたりの部屋に運び戻ってくると、菜々恵が箱の前に座り込んでいた。


「どうした?」

「あ、これ、見てください」


 菜々恵が手に取り見せてくれたのは、キャンバス地のアルバム。

 表紙を開くと、そこにはタオルに包まれたまだ赤黒い新生児がふたり。


「月と詩、か……」


 菜々恵は微笑んでアルバムを差し出す。

 ずっしりと重みあるアルバムは、月と詩が生まれた時からの記録が残されていた。

 白いお包みに包まれた生後間もないふたり。

 眠る小さなふたりをおばあ様が抱き、優しい眼差しでふたりを見守っているものもあった。

 体にガーゼをかけられ、ベビーバスで沐浴しているのは新生児の時期だ。

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