身を引くはずが、敏腕ドクターはママと双子に溢れる愛を注ぎ込む
「菜々恵は結婚式はやりたい?」
「えっ……えと、そうですね……お母様が、挙げてほしいと思っているなら」
「俺は菜々恵がやりたいかを訊いてるんだけど」
コーヒーのカップに口をつけた漣さんの目は、ちょっと私を睨んでいる。
私の意見を聞きたいと、そういうことのようだ。
「それは……やりたいです、もちろん」
なんとなく言っていいのかなと、遠慮の気持ちがあって素直に答えられなかった。
本心では、結婚式はやっぱり憧れている。一生に一度、ウエディングドレスは着てみたい。
「それなら挙げよう。菜々恵がやりたいなら、俺も同じ気持ちだから」
「本当ですか?」
「ああ。菜々恵のウエディングドレスも見たいしな。子どもたちも喜ぶだろう」
「では、お義母様と相談ですね」
食器を洗い終え手を拭く。そのとき、くらっと思わぬ立ち眩みがして、慌ててシンクの縁に手をついた。