身を引くはずが、敏腕ドクターはママと双子に溢れる愛を注ぎ込む
「あっ、パパかえってきたー!」
漣さんの帰宅に気づいた月が、玄関に向かって走っていく。詩も手を止めあとを追いかけていった。
「菜々恵、大丈夫か」
ふたりから状況を聞いた様子の漣さんが足早にリビングへ入ってくる。
「あ、お帰りなさい」
「無理して起きなくていい。そのまま横になって」
「すみません……まだ、ご飯の準備も途中で」
「そんなことはいい。続きはやるから気にするな。また目眩が?」
「はい。ちょっとひどくて」
ソファまできた漣さんは、横になっている私をそのままお姫様抱っこで抱き上げる。
「ベッドで横になったほうがいい」そう言って私を寝室へと運んでいく。
「早急にうちで検査をしよう。ちょっと心配だ」
「はい。私もそうしてもらったほうがいいかと思ってました」
私を寝かせ、あとから不安そうな面持ちでついてきた子どもたちに「ママは大丈夫」と微笑んで見せる。
「明日にしよう。予定は大丈夫か?」
「明日? はい、私は大丈夫ですけど、漣さんそんな急にお仕事の都合つきますか?」
「大丈夫だ。午前中にオペ説明の予約があるが、昼前からは時間を取れる。一度出勤してから、手が空き次第迎えにくるから」
漣さんの手が私の頭を優しく撫でる。
「休んでて。子どもたちは今から食べさせるから」
そう言って、ふたりを連れて寝室を出ていった。