身を引くはずが、敏腕ドクターはママと双子に溢れる愛を注ぎ込む
「あの、水瀬先生。私、本当に一円も出さないなんてやっぱり──」
「誘ったのは俺だからって、さっきも言っただろ。まだ諦めてなかったか」
車内の時計は、二十時五分と表示されている。
食事を終え、再び水瀬先生の車に乗せてもらったのは十分前くらいのこと。
レストランを出たところから何度かお会計について私に言い寄られている水瀬先生は、フロントガラスからちらりと私へ視線を寄越す。
食事を終えレストルームへ立ち、席に戻るとすでにお会計が済んでいた。
そうとも知らない私は帰り際に支払いがあるとばかり思っていて、バッグの中に片手を突っ込んだまま……。
しかし、水瀬先生は入り口でスタッフに会釈をして退店。
そこでやっと、先生がお会計を済ませていることに気がついた。