身を引くはずが、敏腕ドクターはママと双子に溢れる愛を注ぎ込む
車から足を降ろしかけた私の頭上に、水瀬先生の声が降ってくる。降車し顔を上げると、水瀬先生の切れ長の目がじっと私を見下ろしていた。
「仕事の一環だと言ったのは、君が了承しやすいように出た誘い文句だった」
「え……?」
「否定しておくのは、今まで仕事の一環だと言って個人的にスタッフを誘ったことはないということ」
一切目を逸らさず、水瀬先生は落ち着いた口調で告げる。
切れ長の綺麗な一重だと思っていた目は、実は奥二重だったのかと密かに発見しながら、自分の鼓動が高鳴っていくのを感じていた。
「えっと……それは、その……」
どう解釈すればいいのか。そう訊こうと思ったとき、両肩を包み込むように大きな手が添えられる。
「君と個人的に接点を持ちたいと思った。そういうことだ」
「っ……」
あっと思ったときには目の前に影が落ち、唇に柔らかく温かい感触が押し当たった。
えっ……? えぇ……!?
それがキスだと気づいたのは顔が離れて再び目が合ったときで、自分の鈍感さに呆れ返る。
一気に顔が火照り、それだけでは止まらず耳まで熱くなった。