身を引くはずが、敏腕ドクターはママと双子に溢れる愛を注ぎ込む
「これで、良くも悪くも少しは俺のことを考えてもらえればいいが」
「え、なっ」
もはや動揺が隠しきれない私は、先生のどこか冗談交じりのような言葉にもまともに反応できない。
そんな私をフッと笑い、水瀬先生は助手席のドアを静かに閉めた。そのまま運転席へと向かい車に乗り込む。
すぐに助手席側のパワーウィンドウが半分まで開き、薄暗い車内に水瀬先生の顔が見えた。
「今日はありがとう。楽しい時間だった」
「い、いえ! こちらこそ、ありがとうございました。ごちそうさまでした!」
「また、次の機会を期待してもいいか?」
「っ、はっ、はい!」
静かな夜の街に、私のやたら威勢のいい返事が響き渡る。
ハッとして口元を押さえる私の姿をフッと笑い、水瀬先生はハンドルを握った。
「じゃ、また病院で」
そう言い残し、水瀬先生の車は私の前から走り去っていく。
シルバーの車体が向こうの交差点でウインカーランプを焚いて曲がっていくまで、その姿をじっと見つめて見送っていた。