身を引くはずが、敏腕ドクターはママと双子に溢れる愛を注ぎ込む
1、雲の上の人
車椅子に座る患者さんの脚の間に自分の脚を入れ、そこに重心を置いて正面から体を抱き抱える。
「佐々木さん、立ちますよ。せーの!」
掛け声をかけて車椅子からベッドへと移動させると、耳元から「ありがとう」と声が聞こえた。
「いいえー。検査お疲れ様でした」
カーテンが半分だけ開いている窓からは、初夏の眩しい日差しが入り込む。
蛍光灯の明かりがいらないほど部屋は明るく、ベッドに横になった患者さんの掛け布団を整えてから窓に向かう。
「佐々木さん、今日はすごくいい天気ですけど、カーテンもっと開けましょうか?」
「そうだね、そうしてもらおうかね」
「じゃあ開けますね」
カーテンを開くと病室内は更に広く明るくなり、入り口に戻って部屋の明かりを消した。