身を引くはずが、敏腕ドクターはママと双子に溢れる愛を注ぎ込む
「いやぁ、本当にいい天気だ。外に出たくなるね」
「じゃあ、あとで出てみますか? お連れしますよ」
「それは嬉しいね。でも菜々恵ちゃん、忙しいんじゃないの?」
「大丈夫ですよ。おとなりの部屋のベッドメイクしたら手が空くので、お迎えにきますね」
患者さんの「ありがとう」を笑顔で受け止め病室をあとにする。
看護助手になってニ年。私──佐田菜々恵は、都内にある水瀬総合病院で働いている。
一昨年、二十四歳のときに東京に出てきて早二年が経つ。
それまでは故郷である長野県で、育ての親でもある祖母、佐田梅の豆腐屋を手伝っていた。
いつか看護師になりたい。
幼い頃からずっとそう思ってきた私に、夢を叶えに行っておいでと祖母が背中を押してくれたのだ。
高校卒業前から、祖母は看護師になる夢を追いかけなさいと看護学校への進学を勧めてくれていた。
しかし、店もひとりで切り盛りすることになる年老いた祖母を想うと、とても進学をして田舎を出る気持ちにはなれなかった。