身を引くはずが、敏腕ドクターはママと双子に溢れる愛を注ぎ込む
「ここから、月が見えるんだな」
水瀬先生も私と同じように薄っすら覗く月を見つめていたようだ。
「はい。よく、ここに寝て見ていることもあります」
レースのカーテンを引き、ガラス窓を出す。
はっきりと見えた今晩の月は綺麗な満月で、深まった夜空に煌々と光を放っているようにくっきり見えた。
「月、好きなんですか?」
「そうだな……好きかもしれない」
腕枕をしてくれている水瀬先生をちらりと盗み見ると、じっと窓を見上げている。
鼻筋が通った綺麗な横顔につい見惚れてしまった。
「子どもの頃、夏になると長野の別荘に毎年遊びに連れていってもらってたんだ」
「それは、ご家族でですか?」
「ああ。その別荘の寝室の天窓から、こんな風に綺麗に月が見えてた」
懐かしむように話してくれる水瀬先生の声を耳に、満月に目を移す。
「遊びに連れていってもらうと、決まって夜寝付けなくてな。嬉しくて興奮状態なんだろうけど。そうすると、母親が月を見ながら歌うんだ」
「……子守歌を?」
「子守歌もあったし、童謡もあった。だから、この光景を見て思い出した」