身を引くはずが、敏腕ドクターはママと双子に溢れる愛を注ぎ込む


 普段こうして月をぼんやり見ることなんて、忙しい毎日を送る水瀬先生にはないことなのかもしれない。

 そんな日々の中で、たまたまこの部屋に来て、昔の思い出を振り返るきっかけが作れたのなら、それは密かに嬉しいと思う。

 昔の話を聞かせてもらえて、少しだけ水瀬先生に近づけたような、そんなほっこりした気持ちになっていた。


「今日は、なんかいろいろすまなかった」

「え……?」


 突然謝られて、体をよじって水瀬先生を見る。

 腕が回されて、体が密着するように抱き寄せられた。


「心配だったからとはいえ、彼氏みたいな出過ぎた言い方をした」

「え……それは、お酒の飲み方についてですか?」

 飲みすぎて泥酔したら、持ち帰られる危険だってあるなんて怒られたこと。

 水瀬先生はそのことを謝っているのだろうか?

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