身を引くはずが、敏腕ドクターはママと双子に溢れる愛を注ぎ込む
「そんな、気にされることじゃないです。実際私が危なっかしいから怒ってもらったわけで」
「いや、でも、そんな権限はないだろう」
「いえ。あの、こんなこと言ったらおこがましいですけど……そんな風に心配してもらえたのは、嬉しかったといいますか……」
つい本音がポロリと出てしまう。
水瀬先生は単純に、流されて断らずお酒を飲み過ぎただらしない私を叱っただけかもしれないけれど、それでも気にかけてもらったことが嬉しかった。
見かけて心配して追いかけてきてくれたと言われたときの、あの衝撃と感動は口には表せない。
「それは、社交辞令的なやつか?」
フッと笑って、水瀬先生は腕の中の私を覗く。
私は首を横に振り「違います!」と即答した。
「水瀬先生に本気でそんな風に想われて心配される人が羨ましいなって……そう思ったんですよ」
そう言ってみて、ほんのちょっと切なくなる。
どんな人が、水瀬先生の心を射止めるのだろう……?
そんな風に思う私は、いつの間にか水瀬先生に想いを募らせているのだと、こんなタイミングで気づいてしまったことにまた切なくなった。
「だったら、君は自分のことを羨ましがってる」
「え……?」