身を引くはずが、敏腕ドクターはママと双子に溢れる愛を注ぎ込む


「どうしてそんなことを思う?」

「それは……水瀬先生が、私にとって雲の上の存在だからです」

「雲の上?」


 不思議そうに眉根を寄せた水瀬先生は、「なんだそれ」と苦笑する。


「お医者様で、聞くところによれば次期病院長で、みんなが見惚れるような素敵な容姿で。どうしたって、私とは住む世界が違いますから」

「そんなこと関係ない。俺は、ひとりの男として君が好きなんだ」


 温かい腕に抱きしめられ、それ以上の言葉が出てこなくなる。

 伝えてもらったこの想いを、私なんかが受け取ってもいいのだろうか。

 戸惑わせるのは、この先も変わることのない身分差。

 でも……今、確かにあるこの想いを大切にしたい。その想いが何より強かった。

 抱きしめられたまま水瀬先生を見上げ、意を決して口を開く。

 水瀬先生の真剣な眼差しに息が止まりそうになった。

< 66 / 246 >

この作品をシェア

pagetop