身を引くはずが、敏腕ドクターはママと双子に溢れる愛を注ぎ込む
翌日。
「三百から三百七号室までシーツ交換終わりました!」
ナースステーションに戻り、中にいる看護師に声をかける。
「ありがとう。佐田、今日はいつにも増して張り切ってるじゃん。何かいいことでもあったの? 彼氏できたとか。デートとか?」
ぎくり。鋭いツッコミに即「いえいえ!ないです」と笑って誤魔化す。
今更、普段より浮かれて見えているのかと不安になる。
昨日、水瀬先生と約束をしてから、間違いなく浮かれているのは確か。
昨日は帰宅してからゆっくりお風呂に浸かって普段はしないフェイスパックをし、今日着ていく服を真剣に選んだ。
これまでの人生でこんな準備を入念にした夜はない。
「なんだ、無いのか。つまんないの。ま、佐田がよくやるのはいつものことか」
思いっきりつまらないと言われたけれど、普段の仕事ぶりを評価してもらっている発言は素直に嬉しい。
「佐田から面白い話聞けなかった代わりに、俺、面白い情報入手しましたよ」
電子カルテ用のパソコンの前に座っていた遼くんが話に割って入ってくる。
そこに居合わせた看護師たちが「何なに」と遼くんに注目した。