身を引くはずが、敏腕ドクターはママと双子に溢れる愛を注ぎ込む
聞いてしまった話は、午後の私の仕事に支障をきたした。
頭が働かず、患者さんに「大丈夫?」と心配される場面も。
大きなミスをしなかったのは不幸中の幸いだけど、こんなことでは迷惑をかけてしまうと心の中で自分を叱責した。
でも、心は正直なもので、あれからずっと暗い気持ちでそのことばかり考えている。
話を聞くまでは、今晩水瀬先生に会えるのが楽しみで楽しみで仕方なかった。
早く仕事が終わればいいなと思いながら出勤し、今日はやけに張り切ってるなんて声をかけられたくらい。
でもその直後、あんな話を聞いてしまった。一気にどん底に落ちた気分だった。
今からどんな顔をして、水瀬先生に会えばいいのか正直わからないでいる。
その前に、会うこと自体いいのだろうか。だって、先生は婚約をされたっていうのに……。
そんな複雑な想いを抱きながらも、約束の時間は近づく。
今日も以前食事に連れていってもらったときと同じように、病院の地下駐車場で待ち合わせになっている。
仕事を上がり、更衣室で着替えを済ませて地下駐車場に下りていくと、すでに車の運転席に水瀬先生が乗車して待っていた。