身を引くはずが、敏腕ドクターはママと双子に溢れる愛を注ぎ込む


 上背のあるディープグリーンのスクラブ姿。羽織っている糊のきいた白衣の裾がそよ風に揺れている。

 まるで医療ドラマのワンシーンでも観ているのかと錯覚してしまうほど、その立ち姿は洗練されている。

 艶のある黒髪にクールな目元。鼻筋の通った鼻に薄い唇。その顔は、じっと見ることも緊張を強いられるほど整っている。

 そこにいるだけで特別な空気が流れているような感じがするのだ。


「本当だ。水瀬先生を太陽の下で見るのはなんかレアですね」

「菜々恵ちゃんもそうなの?」

「はい。ここで見かけるのは初めてです」


 とは言っても、水瀬先生自体それほど見かけるわけではない。

 心臓血管外科医の水瀬漣先生はオペに入ることが多く、それ以外は外部での仕事も多くあり、外出していることが頻繁だと耳に入れたことがある。

 オペ看護師なら一緒に仕事をすることもあるかもしれないけれど、私のような看護助手が接する機会などある相手ではない。

 同じ病院内で働いていても、こうして遠目から見かける程度だ。

 今はMRと何か話しているようだけど、表情は特に変化もなく無表情に見える。

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