身を引くはずが、敏腕ドクターはママと双子に溢れる愛を注ぎ込む


『まさか、そんなタイミングで電話かけてたとは思いもしなかったよ』


 どこから話せばいいのかわからなくて、唐突に結果を話していた。

 妊娠していることを知ったばかり。今、検査薬を試したところだった。

 そんなことを突然告白されたきょんちゃんは、「えっ……」と一瞬言葉を失っていた。

 無理もない。私だって自分のことなのにそんな気分だった。

 現状を聞いたきょんちゃんが訊くことは、「相手の人は?」。

 私も逆の立場だったら真っ先にそれを訊くと思う。

 彼氏ができて、その人との子を。きょんちゃんはそう思いながら訊いたんだと思う。

 だけど、私から返ってきた事情は、きょんちゃんの思っていた内容とはかけ離れていたに違いない。

 相手の人は、職場のドクターで次期病院長になる人。

 お互いに気持ちが募って一夜を共にしたけれど、実は彼には婚約者の存在があったこと。

 そんな事情を話しながら泣いている私を、きょんちゃんは急かさず焦らず相槌を打ちながら真剣に話を聞いてくれた。

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