身を引くはずが、敏腕ドクターはママと双子に溢れる愛を注ぎ込む
妊娠検査薬を使用してから次の休みの日。
私はひとり、人生で初めての産婦人科を受診した。
誰にも、特に水瀬先生の耳に絶対に入らないように、町の小さな開業医の産婦人科を選んだ。
受付をして診察室に呼ばれるまで、待合い室で診察を待つお腹の大きな妊婦さんを目に、複雑な想いに押し潰されそうだった。
お腹の中に命があるのなら、いずれ私も……。自分の未来をそこに見ている気分に勝手になっていたのだ。
診察は心の準備もする間もなく、検査で提出した尿から妊娠していることが伝えられた。
「おめでとうございます。妊娠七週に入ったところですね」
診てくれた医師はにこやかにそう言った。
やっぱり妊娠していた。水瀬先生の子が、私のお腹の中に──。
その後、経腟超音波の検査をし、医師は更に信じられないことを口にしたのだ。
「おっ……赤ちゃんの袋がふたつあるね。双子の赤ちゃんだ」
妊娠が確定した上に、それは双子だという知らせ。
ふたつの命がお腹の中にいることに驚愕し、医師からの言葉にまともな受け答えができなかった。