身を引くはずが、敏腕ドクターはママと双子に溢れる愛を注ぎ込む
頭の中はいっぱいいっぱいになってしまい、看護師からの今後の説明はほとんど頭に入ってこなかった。
妊婦健診に必ず通うように話されたとき、咄嗟にもうすぐ引っ越しをする予定だと嘘をついていた。
次の予約を取らなくてはいけないことが、妙にプレッシャーに感じたのだ。
どうしよう。どうすれば。
産婦人科からの帰り道、どう帰ったかも記憶にないほど思い詰めていた。
自分の部屋に戻ってベッドに掛けてから、やっと微々たる程度に思考が働きだす。
これからどうしていくべきか。自分はどうしたいのか。何時間もかけて自問自答した。
その中で水瀬先生との時間を思い出し、彼のことを何度も想った。
忘れなければいけない。そう思えば思うほど自分の想いが強くなっていることを、これまで気づかないフリをして過ごしてきた。