身を引くはずが、敏腕ドクターはママと双子に溢れる愛を注ぎ込む


 そんな簡単に忘れることなんてできない。

 だからこそ、絶対に困らせたくないし、迷惑をかけたくない。

 水瀬先生のことを想う私の中で、このときすでに答えは出ていたのだと思う。

 彼から完全に離れる決意と、ひとりでお腹の子たちを産み育てる覚悟。

 堕胎なんて選択は初めからなかった。

 今も想いを寄せている水瀬先生との間にできた新しい命。

 お腹の中にいるふたりに会いたい。その思いだけだった。

 妊娠を知らせないことは、卑怯で残酷で、最低かもしれない。

 だからこそ、水瀬先生のこれからの人生を絶対に邪魔しないように、ひっそりと生きていく。何が何でもバレてはいけない。

 自分の中ですべてを決めると、故郷のおばあちゃんに事情を告白しようとスマートフォンを手に取った。

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