嘘をつく時の先輩の癖
 先輩の瞳が小刻みに揺れ、人差し指と親指でもみあげをつかみ、くるんとさせた。

 そのカップケーキを食べる時の表情が、ちょっと歪んでいた。

 苦手なんだなって、すぐに分かった。

 お兄ちゃんがトイレに行った隙に尋ねてみた。

「甘いの、苦手ですか?」
「えっ? 大丈夫だよ」

 さっきと同じ動きをした。

「苦手…ですよね?」

 先輩の瞳を見つめた。

「うん、実は……」

 やっぱり!

「内緒にしといてね」
「分かりました」

 ふたりだけの秘密!

 この時以外にも、もしかして先輩、嘘ついた? って時はもみあげに触れていたから、これは先輩の嘘をつく時の癖なんだなって確信した。
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