モナムール
切ない恋心



*****


「……こんにちは」


「こんにちは中野さん」



眩しい笑顔に、思わず目を細める。


マスターに告白紛いの口説き方をされた私は、"週末食事でもいかがですか?"という誘いに反射的に頷いていた。


元々マスターのことは素敵だと思っていたため、そこに悩みは無いし"良かった"と笑ったマスターにつられて私もつい笑ってしまう。


そして迎えた今日、日曜日の夜。


dernierは日曜が定休日らしく、一緒に夕食を食べにいくことに。



「中野さん、イタリアンは好きですか?」


「あ、うん。基本何でも好きだよ」


「良かった。予約してあるんです。行きましょう」



そう言ってさりげなく繋がれた右手に、心臓が急に跳ねるように動き出す。


今までにも数人お付き合いした人はいるけれど、歳下の男性に口説かれるのは初めてで。


どうしていいかわからずに、その手に身を委ねるように握り返した。


あの日、帰りに交換した連絡先。


横山 廻。珍しい名前を見て、そういえば最初に聞いた時もそんな名前を言っていたような気がした。


本人たっての希望でバーの外では下の名前で呼んでほしいと言われ、ぎこちないながらに廻くんと呼んでいる。


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