モナムール
「中野さんとデートできるなんて、嬉しいです」
「っ、そういうことあんま言わないで、照れる」
「照れてる中野さんも可愛いですよ」
「お願い、それ以上言わないでっ……」
そんなことストレートに言われると、変に意識してしまってまた顔が真っ赤になってしまう。
あれ、私って今までどうやって廻くんと会話してきたんだっけ?
頭がショートしてしまったか、もう何も考えられない。
そんな私を見てくすくすと笑いながら、廻くんは予約してあるイタリアンのお店に私を連れて行ってくれた。
慣れた様子で注文していく彼は、どうしてかアルコールメニューは一切開かない。
「料理に合うドリンクはおすすめで。アルコール無しでお願いします」
「かしこまりました」
「……お酒は飲まないの?」
バーテンダーだからというわけではないけれど、絶対飲むと思っていたから拍子抜けした。
「はい。今飲んだら、多分俺中野さんのことそのまま持ち帰りそうなので」
「なっ……」
「冗談でもなんでもないですよ?」
不思議に思った私が馬鹿みたい。
不意打ちでそんなことを言ってくるから本当にタチが悪い。
しかも私の反応を見て面白がってるから尚のこと。
「……それに」
「ん?」
「それに、中野さんには俺が作ったお酒しか飲んでほしくないんで」
「っ……だから、そういうこと言うのやめて」
甘い笑顔に絆されてしまいそう。
「言ったでしょう。攻めるって。こうやって俺が口説いて、中野さんの頭の中を俺でいっぱいにする計画なんで」
ぺろっとほんの少し出したその舌。子どものように無邪気な表情が新鮮で眩しい。
恥ずかしさのあまり何も言えなくなってしまった私はそんなことを考えながらも口を閉ざすしかなく。
料理が運ばれてくるまで廻くんの嬉しそうな視線から逃れるために不自然にどうでもいい話題を振りまくるのだった。