モナムール
「廻くんは何飲むの?」
「うーん……そうだなあ。……そうだ、中野さんが決めてくれますか?」
「え?」
「中野さんが選んでくれたカクテル飲みたいです」
急にそんなことを言われても困ってしまうけれど。
そうだなあ……。どうせなら私が好きなウイスキーとかを使ったカクテルで……。
廻くんの後ろにあるボトルの数々に目を向けて、
あ、そうだ。と廻くんに視線を向けた。
「……じゃあ、ラスティネイル、とか」
「……!」
「甘いのが苦手だったら他の考えるよ」
頭に浮かんだカクテルを伝えると、
「いえ。甘いのも好きですよ。……それより中野さんって、やっぱり詳しいですよね」
と驚いたような顔でスコッチウイスキーのボトルに手をかけた。
「え?」
「パッと出てくる名前じゃないでしょ」
「……まぁ、お酒好きだから」
「じゃあ、俺が今なんで中野さんにスクリュードライバー作ったか、わかりますか?」
「んー……柑橘系が似合うって言ってくれたからじゃない?」
改めて聞かれると、確かにどうしてだろう。
「ははっ、じゃあそういうことにしておきます」
「えー?なに、気になるじゃん。教えてよ」
「だめですよ。俺の中での秘密です」
ロックグラスの中をステアする指先が細長くてとても綺麗だ。
見た目はただのウイスキーと大差無い琥珀色を見つめ、完成したラスティネイルを持った廻くんがカウンターから出てきて私の隣に座る。
「じゃあ、乾杯」
「はい。乾杯」
そっとグラスを重ね合わせた。