モナムール
カクテルの意味
*****
「───のさん、なかのさん」
「───……んー……?」
優しくゆすられている感覚がして、薄く目を開けた。
「中野さん、起きて」
「んー……あ、廻くんだあ」
今度こそクリアに聞こえた声に返事をすると、廻くんは困ったように微笑んだ。
「はい。廻です。もうお店閉める時間ですよ」
その言葉を聞いて、ゆっくりと身体を起こす。
「えー……そうなのー?まだ全然飲んでないのに……あれ?もしかして私寝てた?」
「はい。それはもうぐっすりと気持ちよさそうに。珍しいですね、中野さんが寝ちゃうなんて」
まだぼーっとする頭。
心配そうに私の顔を覗き込む廻くんと目が合って、嬉しくてふにゃりと力無く笑う。
「っ!」
すると目を見開いてから、手で顔を覆うように私から逸らした。
「廻くん?どうかした?」
「いや……なんでもないです。それより、どこかで飲んできたんですか?」
私の向かいに腰掛けた廻くんにお水を渡されて、ありがたく受け取って少しずつ飲む。
「うん。そうなの。……でもね、やっぱり私は廻くんの作るお酒が大好きだから物足りなくて。でも結構飲まされたから酔っちゃったみたいで……ごめんね、閉店時間なのに寝ちゃって」
「いえ、今日は混んでて俺が中野さんのお話聞けなかっただけなんですから。謝る必要なんてないですよ」
優しく微笑んで、私の頬につく髪の毛をそっと耳にかけてくれる。
その時に触れた指先がひんやりしていて、気持ち良くてその手に擦り寄る。離れないように掴むと、びくりと肩を跳ねさせた廻くんが可愛い。