モナムール



「ふふっ。……本当はね、廻くんが楽しそうに女の子たちとお喋りしてたから、ちょっとやきもち焼いた」


「……え?」


「廻くんってやっぱりモテるんだなあって。ちょっとモヤモヤしちゃった」



なんだろう。頭がふわふわしているから、普段言えないことも今なら言えてしまいそう。


ひんやりした手が徐々に私の熱で温まっていく。それすらもなんだか嬉しくて、



「でも今こうやってもらったら全部モヤモヤいなくなっちゃった」



ありがと。と笑えば、突然廻くんは立ち上がって私の手を引く。

そのまま抱きしめられた。



「な、にっ」


「……なんでそう、煽るんですか」


「……え?」



私の上でため息のように深く息を吐く廻くんは、ほんのり赤く染まっているような気もした。


廻くんもお酒を飲んだのだろうか。



「こっちの気も知らないで。今何言ったか自分でわかってます?」


「うーん、たぶん」


「多分じゃダメです。それならシラフの時にもう一度聞きます」


「それはダメ。シラフじゃ恥ずかしくてこんなこと言えない」


「……」



温かな腕の中で広い背中に手を回し、鎖骨辺りにぴたりと頰をつける。


ドクドク、と早く脈打つ廻くんの鼓動を聴くと、どこか落ち着いてまた眠くなってきてしまう。


すー……っと。アルコールが香る廻くんの匂いを胸いっぱいに吸い込むと、



「……またそうやって煽る……」



と苦笑いをこぼす。


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