モナムール
「中野さん」
「んー?」
「……梓さん」
「……なーに?めぐるくん」
下の名前で呼ばれたのが嬉しくて、思わず顔が綻ぶ。
腕の中から見上げると、頬を染めた廻くんと目が合って。
かっこいいなあ。
そう思っていると、その端正な顔がだんだんと近づいてくる。
「───俺を煽ったのは、梓さんですからね?」
いやに意地悪く笑った廻くんが、私に覆いかぶさるように深いキスを落として。
「……行きましょう」
そのままタクシーに乗せられて連れて行かれた先は、お洒落なマンション。
ここがどこなのかを聞く前に慣れた手つきで五階の部屋に入った廻くんは、その瞬間に私をドアに押し付けるようにして再びキスを落とす。
「んあっ……ま、って……」
「……待たない。梓さん、舌出して」
「んんっ」
私を貪るようなキスの合間にも廻くんの手が私の服の中に忍び込んでいく。
唇が離れたかと思えばすぐに首筋に顔を埋めて、うなじから鎖骨にかけて何度もキスをしたり舌を這わせたり。
スカートの中にも手が伸びて、焦らすように敏感なところを触れては離れ、その度に私の呼吸は浅くなり苦しくなる。
足がガクガクしてきて、何も考えられないくらい頭がくらくらしてきて。
ついには腰が抜けて廻くんに倒れ込むように抱きつくと。
「ハッ……えっろい顔。……ベッド行くから、ほら抱っこ」
耳元で聞こえる声すらも甘く響いて、身体の奥底がじんわりと熱くなる。
横抱きにされた身体はいつのまにか靴を脱がされ鞄を置かれ、どこか寝室らしき部屋のベッドの上に優しく寝かせられた。