モナムール



「……大丈夫ですよ。当分そんな予定もありませんし、中野さんの愚痴聞くの、嫌いじゃないんで」


「嘘だあ。私だったらこんなお客さん嫌だよ。来るたびに愚痴ってるんだよ?」


「でも、その後帰る時には必ずすっきりした表情をされてるじゃないですか」


「まぁ、それはそうだけど」


「お客様の心の拠り所になってる。それが実感できるので、私は中野さんの愚痴も大歓迎ですよ」


「……マスターは優しいね。ありがとう」



こんなに優しいのに彼女がいないなんて、驚きだ。


さっきの物言いだと、マスターにも想い人がいるようだけど。


こんなにかっこよくて優しいマスターを選ばないなんて、どこの女だよって。こんないい人なかなかいないよ?って。私が言ってやりたい。



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