暗黒ギフト1
「は、はい!」


緊張してどうもぎこちなくなってしまう。


そんな梓を見て6年生のお姉さんはクスクス笑った。


「そんなに緊張しなくて大丈夫だよ。ほら、こっちにおいで」


手招きされて近づいていく。


本当は一番前を歩くのが6年生。


次が1年生から順番に並んでいるのだけれど、いつも梓は6年生のお姉さんに手を
繋がれて歩いていた。


登校班に慣れていないということもあるけれど、万が一途中で体調が悪くなったりしてはいけないからだ。


6年生のお姉さんは優しくて、梓に歩調を合わせてくれる。


会話が途切れないのは、梓の体調変化にすぐに気がつけるようにだった。


学校に到着するころには梓の緊張はすっかり解けていた。


「それじゃ梓ちゃん、頑張ってね」


そう言って6年生の教室へ向かうお姉さんの背中を名残惜しく見送る。


どうせならもっと一緒にいたい。


学校がもっともっと遠かったらよかったのに。


そんな事を考えながら3年生の教室へと向かった。
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