暗黒ギフト2
ノックをしてドアを開ける瞬間が一番緊張する。


健は海斗の背中を押して先に行くように促した。


海斗は先に健に行ってほしかったけれど、ここまできて尻込みしているような自分を梓に見せたくはなかった。


勇気を出してドアの前に立ち、一度深呼吸をした。


まるで人生で初めて試験を受けるときのような緊張感がある。


よし、行くぞ。


心の中でタイミングをはかってドアをノックする。


自分で鳴らした音にビクリと体を震わせた時、中から「はい」と、声が聞こえてきた。


それは海斗が逃げている間にもずっと会いたいと願っていた人の声だった。


鈴の音のようなきれいな声。


ずっと聞いていたくなる声。


その声を聞いただけで海斗の胸は一杯になってしまって、涙が出てしまいそうになる。


必死にその涙を引っ込めて、海斗は笑顔を作ってドアを開けた。


瞬間、窓から差し込んでいる光が眩しくて梓の姿が見えなかった。
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