暗黒ギフト2
暗い視界の中に蘇ってくるのは学校の階段だった。


「あの時、学校で気分が悪くなってうずくまってたのを、海斗くんが助けてくれたとき」


そう言われて海斗は懸命に自分の記憶をたどる。


けれどなかなか思い出すことができない。


たった1度階段で助けただけの少女のことを、海斗はすっかり忘れてしまっているのだ。


「あの日、家に戻ってから私の様態はさらに悪くなったの」


部屋の空気が少しだけ重たくなったような気がした。


病気の話は普段あまり聞かない。


聞いちゃいけないものだと思って、海斗も健も、触れてこなかった。


「トイレに行った時そのまま倒れちゃって、救急搬送された。一時期心配停止にまでなったんだよ」


梓の声はあくまで淡々としていた。


自分の過酷な過去を振り返っているようには見えず、とまどってしまうくらいに。


「その時、夢を見たの」


梓は思い出して頬を緩めた。


それはとてもきれいな夢だった。
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