暗黒ギフト2
『もちろん』


そう答えかけたが、言葉が喉に引っかかって出てこない。


梓の弱々しい声を思い出す。


点滴に繋がれた細い腕を思い出す。


真っ白な部屋を思い出す。


するとなぜか胸が苦しくなって海斗は服の上から自分の胸を鷲掴みにした。


心臓が張り裂けてしまいそうに痛い。


思い出すだけでこんなに痛いのだから、直接梓に会ったらどうなるかわからなかった。


今日もまたあの光景を見ないといけないのか?


梓の涙を見ないといけないのか?


そんなの俺には耐えられない。


海斗は完全に腕の中に顔をうずめると、左右に首を振った。


「え?」


「行かない」


くぐもった声で、そう答えたのだった。
< 70 / 176 >

この作品をシェア

pagetop