秘密育児なのに、不動産王は私と結婚する。
vol.4
森山も廉の母と同じように、廉が私と愛し合うこと自体がでたらめだと思っているのだろう。
そうですね。
「ごめんなさい。廉を見つけたら、ちゃんと別れを言いますから」
「望月さん、そういう意味じゃないんです」
「どういう意味だ?」
「社長のことを知らないのは、社長が守っているからだと思ったことはありませんか。何でも知っているのは負担です。小さい頃から、社長が背負っているものが多すぎて、いいことではないことを知っていたので、隠していました」
私はこの角度から考えたことがない。
「廉は小さい頃からたくさんのものを背負っていたのか」
「望月さんは元社長を知っていますか」
「廉のお父様?」
「うん」
「わかりません」
私は廉が家のことを話したことを聞いたことがありません。閑院家の顕著な地位のため、私も廉に両親のことを聞くのが耻ずかしいです。
私は廉のお母様に会ったことがありますが、廉のお父様に会ったことがありません。
「お父さまは私の存在を知っていますか?」
「知らなかった」
どんな父親でも、息子のことは気にかけているだろう。お母様は私の存在を知っていますが、お父様は知りません。おかしいですね。
「実は、元社長と愛人が心中したんです。あの時社長は三歳でした」