娘ちん、意気消沈

そんなこと言ったの!?


 皆さんは、お子さんの前で、どんな会話をされますか?
 幼い子供だからといって、侮っていたら、しっぺ返しを食らうかもしれません。

 どうせ、意味が分からないだろうと、夫婦などで楽しく会話していても。
 子供は黙って聞いているものです。

 僕はとある映画が大好きです。
 その映画は、R指定がつくような暴力描写が激しいヤクザ映画です。

 晩酌しながら、よくそのシーンをスマホで見ては、ゲラゲラ笑っています。
 暴力描写こそ見せないものの、凄まじい怒号が連発される有名なシーンが大好きで。
 
『てめぇら、ガタガタうるせぇーんだよ!』
『ワレ、なんじゃい!』
『なんや、こいつ。なめやがって……なめんとか、コラァ!?』
『なめてぇねーよ、バカヤロー!』

 という、やりとりが僕は大好物で、ハマると影響されやすい性格なので、日常的にそのセリフを多用します。

 娘たちが保育園や学校で、嫌なことがあったとか、人に嫌なことを言われたりしたと、相談された時なんかは。

 僕は冗談でこう言います。

「そういう時は、先生に向かってこう言えばいいんだよ。『ワレ、なんじゃい!』ってね♪」
 長女は頭がいいので、苦い顔をします。
「そんなこと言えるわけないじゃん」
「ごめんごめん……」

 我が家では、なんてことがよくあるのですが。

 次女である娘ちんは、黙ってそれを聞いていました。

 6歳になる娘ちんは、保育園で好きな男の子がいます。
 僕に似てシャイな子なので、なかなかアプローチができません。
 ですが、話を聞いている限り、脈ありそうな仲なようで。

 ある日、その男の子に向かって、娘ちんはこう言ったそうです。

「ねぇ、ちょっと耳貸して!」
「うん。いいよ~」

 耳元でドスの聞いた声で囁く娘ちん。

「ワレ、なめんとかぁ!?」
「……」

 その後、黙り込んでしまう男の子。
 娘ちんは、どうやら、このセリフを誉め言葉とか、冗談と思っていたらしいです。

 意味が分からなかった、娘ちんは、帰宅して、僕に相談します。

「ねぇ、パパ」
「ん?」
「『ワレ』ってどういう意味?」
「あー、お前とかてめぇとか、かな」
 僕はなんでそんなことを聞いて来るのか、不思議でした。
「え……じゃあ、『なめとんか』は?」
「ん~ 相手をバカにしている……意味かな。どうして、急にそんなこと聞くの?」
「なんでもない」

 急に顔が青ざめる娘ちん。
 あとで、母親である妻に、男の子に言ってしまったことを相談したそうで。
 妻は驚き、
「そんなこと言ったの!?」
「う、うん……意味わかんなくて」
「じゃあ、謝っておいた方がいいよ」
「うん……」

 後日、妻から僕は、事の重大さを知り、とても罪悪感を感じました。

 ですが、先日バレンタインデーで想いを伝えたところ、両想いになれたようで。
 毎日、「どれぐらい好き?」「100万かい!」と言い合える仲になれました。

 僕はこの件で、反省しております……。


   了
< 1 / 1 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:6

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

7億当てるまで、死ねません!

総文字数/20,775

ノンフィクション・実話130ページ

表紙を見る
おじさんとショタと、たまに女装

総文字数/103,701

恋愛(ラブコメ)52ページ

表紙を見る
表紙を見る

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop