こいろり!
「たいら…、泰良っていうのね、素敵な名前だわ!」
「本当ですね。優しく穏やかで、誰からも好かれるような誠実な人間に育って欲しいという、ご両親の願いも伝わってきますしね」
両手を合わせて目を細めるお嬢様に対して、
周の嫌みで刺のある台詞が続けられていく。
「さて、泰良さま。トークタイムはこれ位にして、そろそろお帰りの時間でしょう?玄関までお送りしますよ。さぁこちらへ」
「えー、もっとお話したいわ」
「華花お嬢様、泰良さまはお家のお手伝いでお忙しいのですよ」
「残念。また今度、璃香子と一緒に遊びにきてちょうだい?」
「……」
早く帰りたかったから、周の言う通りこの家のリビングから出たけど。
なんだコイツ、ふざけてんのか?マジで気に入らねぇ。
「おい、なんだよ。さっきのは。なんで俺のこと知ってんだよ。俺に喧嘩売ってんのか?」
一応、あのお嬢様に聞こえないよう外に出てから文句を口にすると。
「璃香子さまの過去と学歴は高卒で良いとは言えませんが、礼儀と愛嬌はとてもよろしいですよね」
周がにっこりと口元を開くから、表情、口調、台詞、この場所でさえ歪んでいるように感じた。