こいろり!
なんで華花と会った事もねー利瑛にそんなこと言われなきゃなんねーんだよ。
そうだ。華花となんか出会って間もねーし、俺も華花もまだ子供だし。あいつが遠いところに行けばお互いに存在が薄れていくに決まってるし。
俺にとっても、ただの思い出になるだけ。
友達にさえ打ち明けられない思いなんて、たいして本気じゃない。
「あ、泰良!!こっちよー!」
聞きなれた声が駅の構内に響き渡った。
振り向けばお嬢様が手を挙げて左右に振っている姿が目に飛び込んでくる。
この間会った時と同じ白いファーのコートは、小さな華花によく似合っていてその存在にすぐ気が付いた。
「声がでけーよ。恥ずかしーだろ?」
「私、駅はじめてなのよ!!」
ふふっ、と嬉しそうに華花が口元を緩めるから、胸がくすぐったい気持ちになる。
華花が笑うとなんだか俺までむず痒くなるって、なんだよこれ。
俺、本当に思い出にできんのか?
「電車はどこにあるのかしら?」
「おい何処行くんだよ!?まず切符買うんだよ!」
「…………切符、あー、そうよね!切符ね!」
華花が手の平をポンと叩いて、ブラックカードを取り出すからギョッとした。
公共機関使いたいっつーから、駅で待ち合わせしたのに。周も美魔女もなんで何も教えてねーんだよ。