こいろり!




「ふふっ、いいの見つかって良かったわ!」


なんとか兄貴達のお祝いの品を買うことが出来た。華花が持つ紙袋の中にはラッピングされたタンブラーセットが入っている。

最初に選ぼうとした数万単位の妻夫茶碗セットは慌てて止めたけど……。



「んじゃー、映画でも行く?」

「えぇ、行くわ!」


「何観たいん?今やってんのがー……んん?」

「えーと。あら、これがいいわ!」


駅ビルの横に映画館があって、すぐに辿り着いたけど。映画なんて観る予定じゃなかったから、全く分かんねーな。

赤司達は何を観てるんだろうか。ぼんやりと、壁に飾られたポスターを見て、華花が恋愛系のものを選んだ。


少女漫画実写化と端の方に書いてあるから少しドン引きする。うわー、寝たら怒られそうだな。

ちらりとすぐ横にいる華花に視線を落とすと、ルンルンと楽しそうにしてるから、一瞬でそんなのどうでもよくなった。




「腹減ったなー。上映まで時間あるし、何か食うか?」

「あら!私、あれがいいわ!」


と言って、華花が指差したのは、可愛いカフェでも高級レストランでもない。
俺が前に周を殴ったファーストフード店の店舗だった。



「ほら、前に行った時に色々あったでしょう?だから味どころじゃなくなってしまって、もう一度きちんと食べたいわ!」

「あぁ?……ぐっ。それは悪かったな」


万単位の妻夫茶碗を買おうとしたり、安いハンバーガー食べたいって言ったり、金銭感覚めちゃくちゃだな。


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