こいろり!
14.お嬢様の誕生日
20××年12月3日。天気は快晴のデート日和。
私、田渕 華花は今日で9歳になりました。
お気に入りのピンクのワンピースを着て、白色のファー付きコートで全身を可愛らしくコーディネートする。
鏡の前でくるりと一回りして、全身をチェックした。
「おかしいわ、大人の色気が少し足りないわ……」
1つ大人になったところで、背も胸も急に大きくなるものじゃないのね。はぁ、小さな息をつく。
でも、お誕生日に泰良とお出掛けできるなんて、本当に嬉しいわ!!
やだ、自然と顔が緩んでしまうなんて。気を付けなくちゃ。
「華花お嬢様、本当に泰良さまと電車で行くのですか?お2人をお送りしましょうか?」
駅のロータリーで後部座席から降りると、周が真剣な表情で窓から顔を覗かせた。
「いいのよ、周。私、前から公共機関というものを利用してみたかったの!電車やバスって憧れるじゃない?」
「しかし、お嬢様……」
「ママもいいって言ってくれたのよ!」
「奥様は楽観的なんですよ。外は危険が沢山あるんです。決して知らない人についていっては──、」
「ふふっ、何を言っているのよ!私はもう9歳になったのよ!だから安心して周。それに、泰良と一緒だもの、大丈夫よ!」
と言って、周に背を向けて走り出す。
今日は特別な日だもの。とても素敵な日になる筈だわ!!