こいろり!
「あ、泰良!!こっちよー!」
構内のエスカレーターに乗って改札口手前の広場に辿り着くと、すぐに泰良の姿を見つける事ができた。
「声がでけーよ。恥ずかしーだろ?」
いつも会うときは制服の時が多いから、泰良の私服は新鮮そのもの。
黒のタイトのズボンにオーバーサイズの上着も、泰良の雰囲気によく似合っている。
か、格好いいわ。とても素敵で、私の気持ちも舞い上がってしまうわ。
「私、駅はじめてなのよ!!」
泰良は面倒臭そうに顔を引きつらせるけど、一緒にはじめての事を体験できるなんて、本当に嬉しくて堪らなかった。
*****
「これなんかどうかしら?」
「……んな高いお茶碗、年下の奴に貰ってもさー。璃香子達、気にするだけだって……」
和の妻夫茶碗を手に取ると泰良が値段見て大きなため息を吐くから、一端、品物を棚に戻して首を傾げた。
「贈り物って高価なもの程、喜ばれる訳じゃないのかしら?」
「喜ぶ奴もいるだろうけどさ、璃香子は違うだろ。こうやって、お祝いしてやりてーってプレゼント選んでるだけでも嬉しいんじゃねーの?」
璃香子のことは大好きなのよ?
でも、泰良は璃香子の話をする時どんな気持ちなのかしら。
私からお願いしたことだけど。あぁ、申し訳なくて少し胸が痛いわ。