こいろり!
それから、今日はお誕生日だから、と買い物の後は映画を観ることになったの。まるで本当にデートみたい。
来年の泰良のお誕生日も一緒にいてくれると、約束してくれたのよ。
まるで夢なんじゃないかって思ったわ。
バンコクへも一生行くわけじゃないって。
それって、日本へ帰ってきたらまた会ってくれるってことよね。
泰良の未来に私がいるなんて、まるで交際しているみたいで。ふふっ、とても嬉しいわ。
「ねぇ、君って加賀美の連れだよね?」
ポップコーンを買いに行っている泰良を待っている時。声のする方を振り向くと、知らない男の人が立っていた。
少し怖そうな感じの人だけど、もしかして泰良の知り合いなのかしら。
「あら、泰良のお友達かしら?」
「そうそう、うん。そんな感じー」
軽い声のトーン、黒いお洋服に深めに被ったニット帽。
顔がよく見えないけど、中学……高校生くらいかしら?
「泰良は今、ポップコーンとジュースを買いに並んでいるわ!あなた、お名前は何ていうのかしら?」
売店の前にできた人の列を指差して首を傾げると、そのお友達がゆっくりと目を細めて笑った。
「そっかぁ、仲がいいんだねぇ!どんな関係なのかお兄さん知りたいなぁ───………」
そう。今日は私にとって特別で幸せな日になる筈、……だったのよ。