こいろり!
「痛いっ、いだだだだ………お腹が、お腹がぁ」
突然、その人がお腹を抱えてその場にしゃがみ込んだ。
「ど、どうしたのかしら!?」
「……お嬢ちゃん。知り合いが向こうにいるから、ちょっとだけ肩貸してくんねぇかなぁ?」
「えぇ、いいわよ!」
眉間に皺を寄せて辛そうだったから、肩を貸して一緒に映画館の端まで移動すると今度は髪の毛が長い男の人がいた。
良かった、この人が知り合いの人なのね。
「あの、お腹は大丈夫かしら?」
「お嬢ちゃん、恨むなら加賀美を恨んでね」
「…………え?」
今まで小さな世界しか知らなかった。
小さな頃から大人に守られて、外出する時も常に監視されて、それでも1人で行動できると疑わなかった。
周は心配性だから、外は危険だという言葉を大袈裟だと思っていたのよ。
あっという間だったわ。口を縛られて簡単に抱えられて大きな鞄に入れられてしまった。
気がついたら薄暗くて小さな部屋の中。
その部屋は、大きな音楽が耳の奥に響いてあて、奥にあるテレビの画面には歌の歌詞が流れているのが見えた。
「おいっ、こっち向けよ!」
怒鳴り付けるような乱暴な声と同時に全身がビクリと震える。
私は手首を前で縛られて、身動きが取れない状態になっていた。