こいろり!



「うわー、泣いちゃったじゃん。こんな震えちゃって可哀想」

「うっ、うう、うぇ……あ、ママぁ、周……た、泰良ぁっ」


縛られたままの手で、溢れ落ちていく涙を拭う。拭っても拭っても、涙は全然止まらなくて、鼻水も嗚咽さえ出てきてしまう。



「泰良ねぇ……。その加賀美泰良が悪いんだよね。ここにいんのは、(みぃんな)アイツに恨みを持ってる奴等だかんな。恨むなら加賀美を恨みな」


違うの、違うのよ。泰良が悪くないのは知ってるのに。





「あー、こんにちは。加賀美くんの携帯ですかー?てゆうか、お前のお姫様預かってんだけど?」


突然、そんな台詞が耳に入るから、体がビクッと反射的に動く。
恐る恐る声のする方へ顔を向ければ、部屋の中を隠すように扉の前に立つ男の人が、私のスマホを使って話していた。



「えー、どうしよっかなー。無事だよ?まだ(なん)にもしてないけどさ。それは保証できねーなぁ」


泰良と……、お話しているのかしら。



「なんだよ、お前が悪いんだろぉ?お前が恨まれるような事するからさー」


違うのよ、泰良は悪くないのよ。悪いのは騙された私なのよ。
何も言えないまま、首を小さく横に振る。



「助けて欲しかったらさー、加賀美1人で来いよ。赤い頭は連れてくんなよ。1人で来なかったり、警察とか連絡しちゃったらこの()っちゃくて可愛いお姫様どうなるかなー!?ひゃははははっ」


私が人質なの?こんなに沢山の男の人達がいるのに、ここに泰良が来ちゃったらどうなるの?


< 132 / 178 >

この作品をシェア

pagetop