こいろり!
「うわー、泣いちゃったじゃん。こんな震えちゃって可哀想」
「うっ、うう、うぇ……あ、ママぁ、周……た、泰良ぁっ」
縛られたままの手で、溢れ落ちていく涙を拭う。拭っても拭っても、涙は全然止まらなくて、鼻水も嗚咽さえ出てきてしまう。
「泰良ねぇ……。その加賀美泰良が悪いんだよね。ここにいんのは、皆アイツに恨みを持ってる奴等だかんな。恨むなら加賀美を恨みな」
違うの、違うのよ。泰良が悪くないのは知ってるのに。
「あー、こんにちは。加賀美くんの携帯ですかー?てゆうか、お前のお姫様預かってんだけど?」
突然、そんな台詞が耳に入るから、体がビクッと反射的に動く。
恐る恐る声のする方へ顔を向ければ、部屋の中を隠すように扉の前に立つ男の人が、私のスマホを使って話していた。
「えー、どうしよっかなー。無事だよ?まだ何にもしてないけどさ。それは保証できねーなぁ」
泰良と……、お話しているのかしら。
「なんだよ、お前が悪いんだろぉ?お前が恨まれるような事するからさー」
違うのよ、泰良は悪くないのよ。悪いのは騙された私なのよ。
何も言えないまま、首を小さく横に振る。
「助けて欲しかったらさー、加賀美1人で来いよ。赤い頭は連れてくんなよ。1人で来なかったり、警察とか連絡しちゃったらこの小っちゃくて可愛いお姫様どうなるかなー!?ひゃははははっ」
私が人質なの?こんなに沢山の男の人達がいるのに、ここに泰良が来ちゃったらどうなるの?